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passage * [memorandum+]


passage, port bou

ピレネー山麓のボイ渓谷の教会群
世界遺産も知らなかったころ、図書館で借りた
写真集のモノクロ・コピーを握りしめて
ロマネスク教会の廃墟を巡る旅の終わり

バルセロナより特急で北へ
ダリ美術館のあるフィゲラスを通り越して
フランスとの国境の地
ポルト・ボウという名の小さな港町へ向かった

ユダヤの迫害を受けて毒服自殺した哲学者・作家
ヴァルター・ベンヤミンのオマージュ
ダニ・カラヴァンの作品「passage」をみる為に

少し長い「通過」のエピソード

異常寒波の年、多くの犠牲者が出たクリスマス
最果ての地に訪れた、僕だけは暖かだった
フランス国境と、憧れの作品が目の前だったから
駅前のバールにて、ホットラムを頼んで
少し暖まり、もう一杯 *

もちろん英語も通じない地で、メモさえ忘れた僕は
何をどう説明していいのか、悩んだけれど
誰も急がないし、誰も困らない

コートを脱いでほっこり、下手な英語で話しかけた
「一体何の話をしているんだい?」
「墓なんて何処にだってある・・・」
「W・ベンヤミン?知らないなぁ」
と、一通り会話したところで、ナプキンにスケッチ *

「あ、知っているぜ、それは、あの港の上の丘だよ!」
平日のお昼、酔っぱらっていたおじさんが
僕と同じレベルの英語で教えてくれた
ラムで、もう一度乾杯 *

坂道を登って行く、2台のカメラも重くなかった
陸続きのはずなのに、対岸のフランス
空は青く、土は赤く、白壁が映える
しばらく歩くと、ベンヤミンも眠る集合墓地がみえ
供えてある、鮮やかな花々に手を合わせる

「passage」という作品は、幾つかの要素で構成される
階段、石組、台、オリーブの木、そして「陽光」・・・

海に向けて岸壁を降りて行くコルテン鋼の
トンネル・スリットと階段、その先の硝子には
スペイン語、カタロニア語、英語、ドイツ語と
4カ国語で、彼の言葉がエッチングで刻んである

この作品に会いに来た、その時間と事実を噛み締めた
視点、エネルギー、引力、必然性、縁
W・ベンヤミン、ヴィトシュタイン、D・ジャーマン、Y・クライン
誰かがいうように「偶然なんて、そうそうない」のかもしれない

コートのポケットに残っていたスケッチ
悩んだけれど、紙飛行機にして
地中海を飛んだ

有名なひとたちの記憶よりも
無名なひとたちの記憶に敬意を払うほうが難しい
歴史の構築は無名のひとたちの記憶に捧げられる
Walter Benjamin

Dani Karavan
http://www.danikaravan.com/


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コメント 4

irie

世界が広がりました*
by irie (2007-09-05 23:46) 

+k

いえいえ *
ちっぽけなところから
いつも、飛び出たいなって
思ってる、気持ちだけです
まだ、coyaも、オーロラも
見たことないんだもの!

by +k (2007-09-06 10:20) 

irie

去年よりもっと強く、イメージが広がっていきます。
美術館でみた映像と、+k さんのこのエピソードで
多分、一生体験することのない空気感に包まれ、
ほんと、世界ももっと広がっていっています、今。

やっぱりスゴイです。
カラヴァンも、+k さんも *
by irie (2008-10-25 10:50) 

+k

ありがとう *

でも世田谷美術館、結局行けませんでした
素敵な展覧会だったと・・・とても残念です

しかし何だか、たった1年前の文章でも
自分の文章は、読むのも恥ずかしいものです+

by +k (2008-10-26 12:45) 

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